70代女性、弁膜症のために去年の5月に心不全を発症して当院初診。急性期には循環器内科で
入院治療していただいて、以後は当院に受診してもらっています。
最近は、随分と体調が良くなっているのですが、ご本人はどうにかして薬を減らすことができないかと
思っているようです。
「調子はどうですか?」
「あんまり良くないです。体重が減るのは止まったみたい。」
「そうですか、息苦しかったりするんですか?」
「それはないんですけど、尿の回数は増えるし、なんとか薬をやめたいんです。」
「そうですか、今使っている心臓の薬の四種類の組み合わせが本当にいいんですけどねぇ。
もうこの話をずっとやってるんで、私もそろそろ飽きてきました。どうしましょうか、
いっそやめちゃいますかね。」
「やめたら、悪くなりますか?」
「はい、そう思いますよ。」
いつもいつもこんな会話の繰り返しです。ちょっと思いついて胸の写真を撮ってみることにしました。
「これが今日の写真なのよね。心臓の大きさを測ると胸の56%になっていますよ。
ちょっと大きいんですけど、心臓の左側と肋骨の間にも空気が入っているのがわかりますか?」
「はいわかります。」
「そしてこれが苦しかった時の写真。この写真では左側に空気も入っていないし、
右側にも下に白い部分があって、水が溜まっているのが見えます。肺の空気が少なくなっているから
苦しかったのがわかりますか?」
「そうですね、全然違うわ。どうしてこうなっちゃったの?」
「弁膜症のせいなのよ。そしてこれがあなたの心臓の実力なんです。今は随分と良くなっているけど、
それは心臓を助けてくれている薬がものすごく効いているからなんだよね。弁膜症の手術をしない限りは、
薬をやめるとまたこうなると思うよ。」
「そうなのね、それじゃ死ぬまで薬のんどかなきゃだめだね。」
「うん、そう思うよ。忘れないようにこの写真をプリントするから持って帰ってね。」
病気であることを受け入れることは時には難しいことだと思います。特に、急性期には辛い症状があっても、
それが全くなくなってしまった場合にはそれが顕著に出てくるようです。誰も病気とは思いたくないですよね。
でも、面倒な薬を長くたくさんのんでもらうためには、そこのところを越えてきてもらわないと、
やっぱり治療は難しいと思います。
ずいぶんと時間はかかったけど、今度は納得してもらえたかな。

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