60代男性、高血圧で受診中です。今日も特に問題なくお元気な様子です。
「何か心配なことありますか?」
「血圧が高くなってきたようです。」
「そうなんですね、それでは記録を見せていただきましょう。」
血圧の記録を見ると、以前は上の血圧が120−130であったのが、130後半まで上昇しているようです。
「なるほど、確かに少し上がってきているようですね。」
「はい、大丈夫なんでしょうか?」
「基本、治療の根本にあるデータは、日本の久山町という所で調査したデータで、上の血圧が140を越えると、急に脳梗塞の発症率が増えてくるので、そうならないようにしています。」
「はい。」
「でも、120を目標にした臨床研究もあるんですね。それによると、120を目標にしたほうが、140を目標にするより、少し結果が良かったことがわかっています。」
「そうなんですね。」
「はい、でもそれは、80人を140目標から120目標にして、一人の病気を防げる程度の差しかありませんでした。また、120を目標にした方が、血圧が低くなりすぎる低血圧の副作用が多かったんです。」
「なるほど。」
「なので、私は今の血圧で十分大丈夫だと思います。どうしますか、薬増やしますか?」
「いや、今のままで大丈夫です。」
理屈の上では、血圧は低い方が血管にかかる負荷が少なくなるので、血管寿命が長くなるはずです。でもやりすぎると、低血圧による副作用が出てきます。
その辺りのバランスをうまくとっていくことが必要になります。
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