40代男性、初診の方です。大変元気に見える方で、健診で採血の結果に小さな問題を指摘されましたが、いずれも大きな問題では無いようです。
ただ、健康診断の項目をみると、心雑音が今年初めて記載されていました。
聴診してみると、はっきりと雑音が聞こえます。さっそく心臓エコーをしてみると、僧帽弁のしまりが悪く血液が逆流しているようでした。
「検査をしてみると、左心房から左心室の間にある僧帽弁の機能が悪いようです。しまりが悪くて、血液が肺に向かって逆流していますね。何か症状は無いですか?」
「特に何も無いんです。」
「そうですか、逆流の程度は中等度って言う事になると思います。残念なことに軽度では無いですね。」
「そうなんですね。」
「弁膜症の場合にはあまり程度が悪いと、心臓に過度に負荷がかかるので、手術しなくてはいけないことがあります。ただ、このまま何もなく経過することもあるんですね。ですから、半年したらもう一度来ていただいて評価したいと思います。」
「そうですか、自然に良くなることはないんですか?」
「残念ですが、それはないですね。」
「そうですか、手術となるとガーって胸を開くんでしょ?」
「今は、そんなに大きく胸を開けることは少なくなっていますよ。手術の時には傷跡が小さく手術していただける上手な先生にお願いしましょう。」
「わかりました。」
「さらにお伝えしたいのは、僧帽弁に問題がある場合に、歯科や泌尿器科の手術などをする場合に、そこに細菌がついて繁殖する厄介な感染症が起こることがあります。ただそれは抗菌薬で予防できるので、手術が必要になったら、先生に心臓のことをきちんと伝えてくださいね。」
「はい、わかりました。」
健康診断の医師による聴診が、重大な疾患の発見につながった患者さんになりました。検査手段が発達した現在、私も特に聴診器を使うことが少なくなっていました、深く反省しています。
これからは、できるだけ聴診器をはじめとした昔からの診察手技をしっかり多く使うように心がけようと思っています。
コメントをお書きください