30代男性、動悸を主訴に初診でした。
「ブルガダ症候群って言われているんです。動悸を感じるとそれがどうも心配で。」
「そうなのね、ネットで調べると心配になるよね。」
ブルガダ症候群は先天的に不整脈それも致死的な不整脈を起こすリスクが高くなることがあり、注意してみなくてはいけない心電図の一つになります。
心電図をとってみると、典型的な波形とは少し違うようです。
「うーん、あんまりブルガダのようには見えないんだよね。特に悪いタイプには全然見えないんだけど、どういうふうにして診断されたのかな?」
「はい、循環器の病院で点滴で薬を使って診断されました。少しうってなりました。」
「そうなのね、そこの先生に何か言われたかい?」
「いや、何も。僕ももう少し突っ込んで聞くべきでした。」
「そうなんだ、でもなかなか聞けないよね。」
話を聞いてみると、動悸の症状そのものはあまり悪性なものではなく、今までに失神発作を起こしたことはありませんでした。
「家族や親類に心臓発作で急に具合が悪くなった人はいるの?」
「そういう人はいないです。」
「そうならば、それほど心配しなくてもいいと思うよ。私も3人ブルガダの人に埋込型除細動器を埋め込んでもらったことがあるんだけど、本人や家族が重症の不整脈を起こしているのよ。その場合には専門の病院でもう少し検査をしてもらう必要がある。埋込型除細動器は発作の時に致死的な不整脈をすぐ治療できるんだよ。でも今は、詳しく調べる必要もないと思うよ。」
「そうなんですね。少し安心しました。先生とは気が合いそうです。」
心電図でブルガダ症候群の波形を見ることはそれほど多くはありませんが、とても珍しい類の波形ではなく、私も時々目にすることがあります。ブルガダ症候群の心電図波形を持っている方は、時に致死性の不整脈が出ることがあり、こちらも注意して見る必要があります。
不整脈の致死性を予測することはとても難しいことではありますが、少なくとも診断名を告げた医師には、それが患者さんのその後の人生のトラウマにならないようにする処置と配慮が必要だと思いました。
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