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心房細動で倒れてしまいました


40代男性。高脂血症で治療中です。
いつも元気なのですが、先日心房細動で倒れて救急車で運ばれたとのことで来院です。
「見た目、元気そうだね。大丈夫なの?」
「はい、もう治ったみたいです。」
搬入先の病院で取ってもらった心電図等の資料を持って受診。このように実際のデータを持参させてくれる病院は本当に有り難いです。
「そうだね、心房細動で脈拍が一分間に120回だから、今の倍ぐらいあるね。」
「はい、とても苦しかったです。ちょっと気を失ったみたい。」
今は元気なのですが、救急の現場では心房細動の詳しい話は聞いていないようです。救急現場ではそのような時間がないことが多いです。
「それじゃ、心房細動について話すね。まず一番に大切なことは、すぐに心臓が止まってしまうような種類の病気ではないことなのよ。心房細動になったら、もう死んじゃうとか思わなくていいの。」
「そうなんですね。」
「でもね、脈の数やリズムが崩れるから苦しくなる人が多い。あなたの場合はいつもの倍の脈拍数になっているから、心臓の効率が悪くなって苦しくなったの。」
「そうなんですね。」
「そういう人は、脈拍の調整をして遅くするだけでずいぶんと楽になる人も多いよ。救急病院でも頓服でその薬を出してくれているから、次に起こったらその薬をのみましょう。」
「はい、わかりました。」
「今回は初めてだから、次いつ起こるかはわからないよね。もう起こらないかもしれないしね。」
「そうですね。」
「あまり沢山起こるようなら、薬で予防も出来るし、またカテーテル治療でもっと確実に予防することも出来る時代になってるよ。」
「そうなんですね。」
「でもね、心房細動の時には心臓の中で血のかたまりが出来やすくなるのよ。それがいろいろなところで血栓症を起こす可能性があるんだよね。」
「それは心配です。」
「うんでもね、あなたの場合はそのリスクを計算するととっても低いの。だから血栓症を予防する薬も飲まなくていいと思います。」
「はい、よくわかりました。わかりやすかったです。」
救急現場でよくあることなのですが、患者さんも医療者もその場を切り抜けることで精一杯で、細かい話はする時間がなかったり、しても患者さんの方で頭に入っていかないことが多いです。
今回のように症状が一旦落ち着いた後で、もう一度今後の方針について見直すことが大切だと思います。