50代男性、高血圧で初診でした。九州から長期間の出張でこちらに来ているとのことでした。
出張でいらした方とはあまり深いお付き合いにはならない事が多いので、薬手帳をみて、同じ薬を出してさらっと診療を終わらせようとしたら、
「先生は、心臓の事は詳しいですか?」
「ええ、まあ、それなりに。」
我ながらなかなか良い返しが出来たと思います。
「私、脈が早くなる発作があって、アブレーションをしたら治るって言われてるんです。それってどういうことですか?」
「そうなんですね、不整脈の名前はわかりますか?」
「名前は聞いていないんです。でもアップルウオッチに記録があります。」
iphoneに残っているアップルウオッチの記録を見ると、規則正しい特徴的な波形がしっかり記録されていました。
「この不整脈は発作性上室性頻拍症って言います。面倒なのでPSVTって略していう事もあります。」
「そうなんですね。」
「脈が早いのでかなり苦しいとは思いますが、危険度はそれほど高くないんですよ。」
「そうなんですか。」
「アブレーション(カテーテル治療)もとても有効なのですが、薬で予防できることも多いです。今のんでいる高血圧の薬を発作の予防効果のある薬に変えてみましょうか。」
「お願いします。」
「次回はいつにしましょう、2ヶ月後ならもうお帰りになるのかな?」
「処方は1ヶ月分でお願いします。また来ます。あ、そのメモはいただいても良いですか?」
病名と不整脈の性質を書いたメモ(病名連絡箋)をお渡しして帰っていただきました。出張でいらした方でしたが、とても欲しかった情報を提供できたようです。今日は思いがけなく濃密な時間を過ごせました。次回の受診が楽しみです。
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