60代女性、二週間ほど前に脈の乱れがあるとのことで初診でした。不整脈には2種類あるようでしたが、心電図ですぐにつかめるほどには頻繁に起こっていないようでしたので、携帯型の心電図記録装置を持って帰っていただき、心電図が取れたら再来の形にしていました。
「うん、不整脈が記録されていましたよ。『心房性期外収縮』と『心房性頻拍症』の診断になりますね。」
「そうですか、それってなんですか?」
「ですよね、病名を言われてもなんのことかわからないですよね。不整脈は心電図が取れると、名前をつけることができるんです。そして、その名前で、どれくらいの危険があるかがわかります。」
「そうなんですね。」
「その点からお話しすると、『心房性期外収縮』は全く無害なので、治療の対象にはならないんです。あと、『心房性頻拍症』については、あなたの場合は2秒くらいしか続かないので、症状もそれほど激しくないし、治療しないというのが、選択になりますね。ともかく、心配ない不整脈です。」
「なるほど、そうするとまた症状が出てきた時に、受診すればいいですか?」
「いや、この不整脈は治療しない方がいいのです。ですから、今の話を聞いて、不整脈は起こっているけど、心配ないものだから気にしないようにするというのが、今回の治療のゴールになります。でも、どうしても今の不整脈が辛くなったらまた来てくださいね。」
「はいわかりました。」
「また、今の脈の乱れとは違ったもの、例えば脈の早いのが続いたり、その時に胸が痛くなったり、気を失いそうになるようなことがあれば、また違った不整脈が起こっている可能性もありますので、その時には相談してくださいね。」
「はい、そうします。」
不整脈はどのようなものであれ、血液の流れが不均一になるので不快な症状を伴うことが多いです。ただ、全ての不整脈を治療することは、かえって心臓を不安定にすることがわかったので、重症度をよく考えて不整脈治療をする必要があります。
私が医者になりたての頃には、今ではほとんど使われなくなった薬が原因で、より重症の不整脈になった患者さんをみることはさほど珍しくありませんでした。
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