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手術しようかと思ってるの


77歳女性、僧帽弁閉鎖不全症(弁膜症)で治療しています。治療開始時は胸水が溜まっていたり、足のむくみがあったりでやや心不全の症状が強かったのですが、現在は落ち着いているように見えます。
「調子はどうですか?」
「全然良くないの、手術しようかなって思ってる。」
僧帽弁閉鎖不全症については、手術のオプションもある方なので、以前の外来の時に、そのお話はしていました。
「そうなのかい、まだ、息が苦しかったりするの?」
「そうじゃないけど。」
「そうか、じゃあ、どうして手術しようと思うのかな?」
「まず、薬をのむのが嫌なの。前にペニシリンで湿疹が出たことがあって、薬が怖いのよ。あと、血圧計が時々不整脈って言ってくるのも嫌なの。」
「そうなんだ、今の薬をのんでいて、湿疹は出るのかい?」
「いいや。」
「そうなのね、それじゃぁ、不整脈って言ってくる時に、何か苦しかったりするの?」
「それはないの、でも嫌なのよ。」
「うん、わかった。まずね、不整脈は脈が飛んでいるやつだと思うんだけどそうかい?」
「はい。」
「それはね、心配ない不整脈なんだ。あとね、手術をしてもそれは無くならないと思うよ。」
「そうなんですか?」
「うん。あと、手術をして心臓の機能が良くなっても、薬はのみ続けないといけない場合が多いと思うよ。それでも手術するかい?」
「そうなの。それじゃあもう少し我慢しようかな。」
弁膜症で、手術適応もある方だとは思うのですが、手術しても彼女が求めるものは得られないと思いました。
その場合、「手術されたけど、何も良くならない!」という感情だけ残って、誰も幸せにならないパターンに陥りがちです。今回は焦って手術の選択をしないようにお伝えしました。